におい

■春

朝が来るまで雨が降っていたのか、少し湿ったような。時折つめたい顔を見せる風のような。見頃を過ぎたソメイヨシノを見上げたときの、緑色に透ける光のような。

春のにおいって何か正体があるのだろうかとふと思って調べてみたら、あっさり答えが出てしまった。

  1. 花の香り: 春は多くの花が咲く季節であり、桜(サクラ)、菜の花(ナノハナ)、梅(ウメ)、チューリップなど、様々な花の香りが空気に広がります。

  2. 新芽や若葉の香り: 春には木々が新芽を出し、若葉が生い茂ります。新芽や若葉が出ると、特有のフレッシュな香りが漂います。

  3. 土の香り: 春の雨が降ると、土や植物が潤い、土の香りが立ち込めます。これはペトリコールと呼ばれる現象で、特に雨上がりの春の匂いに顕著です。

  4. 花粉: 春は花粉の飛散が多い季節でもあります。スギやヒノキなどの樹木から放出される花粉も、春の匂いの一部を形成します。ただし、花粉症の方にとっては、花粉は辛いものとなります。

これらの要素が組み合わさり、春の特有の香りや感じる匂いが生まれます。春の匂いは、人々に心地よさや新たな始まりの感覚をもたらすことが多いです。

 

ーFrom GPT-4

 

一人ひとり校長先生につけてもらった名札。ワックスでつやつやになった教室の床。手のひらのしわの形に残った鉄錆。ツツジの蜜。新しく買ってもらったデニムのスカート。肩の余ったブレザー。先輩。後輩。端っこの杭を打たなかったレジャーシート。はじめて一緒に出かけた日。これから毎日見ることになる天井。少しくすんだ水色のコート。

 

■クレンザー

今年引っ越してきたマンションでは、しょっちゅう管理会社の人がやって来ては共用部分を念入りに掃除しているようだ。外のクレンザーのにおいが家の玄関にまで立ち込めている。
お腹が痛くなる。
というよりは、お腹の痛い感覚が思い起こされるというほうが近い。

小学生の頃の話。給食を終えて、昼休みに思いっきり外で遊んでから掃除のために校舎に戻る。コンクリート造りのトイレはひんやりとしており、外遊びで火照った身体が急激に冷やされる。食べたばかりで走り回ったからか、牛乳が体質に合わないからなのかはわからないが、この時間になると高確率でお腹がゴロゴロしてくる。だがなんと残酷なことだろう、学校ではトイレに長く籠もるのは恥ずかしいという風潮があった(大体みんなそうだと聞く)。ましてトイレ掃除で人が集まっているこの時間に、個室になんか籠もれるものか。だから多少のゴロゴロは我慢して、他のことで気を紛らわそうと必死だった。

流しやタイルの掃除には「カネヨクレンザー」という粉末状の洗剤を使っていた。全体に水を流してからクレンザーを振り撒き、たわしやデッキブラシでこする。水とクレンザーの配分が難しい。水が少ないと全然泡立たないし、逆に多すぎるとクレンザーごと流れて排水溝に吸い込まれてしまう。
わたしは結構まじめな小学生だったので、しっかり掃除する優等生に見えていたかもしれないが、実際はゴロゴロを忘れるために無心で目の前の粉を泡立せていただけという側面が強い。
各学年2クラスしかない公立の小学校の蛇口からお湯が出るわけもなく、冬は手の感覚がなくなるほどに水が冷たかった。あまりの冷たさに何度も心が折れそうになったが、幸い致命的な失敗は一度もしなかった。

カネヨクレンザー
■コーヒー

出かけた先で珈琲屋を見つけると、お土産にと100gか200gを挽いてもらって帰ることがよくある。ただ飲むのが追いつかずに、しまう場所がなく袋のままテーブルの上でアロマと化していることもよくある。

つい先ほど。夕飯を終えてのんびりしていたら、同居しているパートナーがうっかりギターを倒して、そのはずみでコップに入っていたコーヒーがまるごとカーペットにこぼれてしまった。一瞬空気が凍ったが、すぐに拭き取ったのと、カーペットがもともと濃い色で複雑な模様だったから、汚れが目立つことは全くなくほっとした。もし白いカーペットだったら全面に均等にこぼさなきゃいけなかったねなどと笑った。

だがにおいだけは残ってしまった。これ以上拭き取る水分もないので、とりあえずファブリーズを振り撒いて根本的解決からは目を逸らした。

コーヒーは飲む前までのにおいがいちばん良い。飲んだあとは普通。こぼれたあとは良くない。これってなぜ?

きっとまた、あっさり答えは出てしまうのだろうが。