女子トイレ/持たざる女

いつでも混んでいる場所。

それは駅?デパート?

いやいや、

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女子トイレだ。

 

殿方は連れの女性がトイレに行ったきりなかなか戻って来ず、イライラしたという経験が少なからずあることだろう。

実は、女子トイレというのは単なる用足しの場ではないのだ。

まず、化粧直し

化粧は皮脂や汗でだんだんと崩れてしまうもの。

いつも綺麗でいるあなたの彼女は、恐らくあなたと待ち合わせる前にトイレに立ち寄り、化粧を直しているのだろう。

ちなみに朝の早い時間には、化粧道具の一切を持ち込んで、いちからメイクを始める玄人もいたりする。

次に、歯磨き

いくら化粧だけがしっかりしていても、お口のエチケットがなっていなければ台無しである。

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こちらのような、ポーチに入れてスマートに持ち歩けることを狙いとした、オシャレな携帯用電動歯ブラシが人気を呼んでいる(私も持ってる)。

最近の電動歯ブラシは性能も良く、単なる振動ではなく"音波振動"なるものを発生させ、口内環境向上をアシストしてくれるらしい。

その繊細なバイブレーションを口の中に突っ込み、鏡に映る自分を見つめながら、何を思う、女子たちよ。

そして、お喋り

女子たちにとって、トイレというのは大事なコミュニケーションの場である。

「その服どこで買ったの?」

「今日はハズレだね、早く帰りたい」

「あの子浮気してるらしいよ」

などと、いわゆる女子会のベータ版のようなものが連日そこで繰り広げられているわけだ。いやむしろ、女子トイレこそが女子会の母と言っても差し支えはないだろう。

 

 そんなこんなで、女子トイレという場所には大抵たくさんの人が居合わせることになるのだ。そして女子トイレには、女子にだけ見える視線の糸が無数に張り巡らされている。

 

 

 

ところで、わたしにはどうしても解せないことがひとつある。

 

この前たまたま女子トイレに居合わせた女性の話だ。

個室から出た女性は、手洗い場へ向かう。それはもちろん、手を洗うためだ。

自動で水の出る蛇口に手をかざし、水の流れを待つ。

センサーがその手を感知するまでは少し時間が掛かる。まぁ、少しと言ってもほんの一瞬だが。

そして、水が出る。

ようやく水が出たかと思ったその瞬間、手を洗うと思われた女性は、指の先をちょこっと濡らしただけで、サッと引っ込めてしまったのだ。

 

いやいやいやいや。

いま、え、いま、手、洗ってなかったよね??

 

(幼稚園の頃、お弁当の前に必ず消毒液を溶いた水に5秒間手を浸すという決まりがあったのだが、冬はその水も凍るように冷たかったから、先生が見ていなかったのを良いことに、前にいた男の子が1秒で手を引っ込めるというズルをかましていたのを思い出した。ちなみに彼は医者の息子だった。)

 

十分に洗われることなく中途半端に濡らされた彼女の指先。

水としても、役割を全うせずにハンカチに拭き取られてしまうだけの運命なんて御免だろう。完全にHとその半分のOのムダ遣いである。

 

そんなことを思いながら、わたしはまだその女性のことを見ていた(トイレの列が長い)。

彼女は引っ込めた手をハンカチで拭くと思われた。

 

ところが彼女は一瞬の躊躇いのような動作を見せた後、あろうことかその手を自分の顔のあたりに持って行き、前髪を整え始めたのである。

 

 

いやいやいやいやいや。

え、いま、え、いま、え、手、拭いてなかったよね???

 

そう、彼女の指先に付着した水は、前髪の乱れを直すために使われたのだ。

良かったね、水!!手はきちんと洗えなかったけど、前髪をキレイにできたよ!!!

 

そして注意深く観察してみると、このようにキチンと手を洗わない女性というのは、意外にたくさんいるものだ。

濡れた指の行先は様々。同じように前髪を直すために使われることもあれば、着ている服で無造作に拭かれることもある。また、鞄の中をゴソゴソと、ハンカチを探すような素振りを見せながら歩き出すも、トイレから出るあたりではその動きを止め何事もなかったように出ていくという演技派女優もいる。

 

ハンカチを持たざる女。

 

手指乾燥機がお馴染みになった現代では、油断してしまうのもしょうがないことなのだろうか。

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いや、しかし、百歩譲ってハンカチを偶然忘れてしまっただけだとしても、あの手の洗い方は絶対的におかしい。

そんな洗い方をするぐらいなら、いっそ手洗い場に寄って指先を濡らす必要がないのではないか。

それでも女子たちは必ず手洗い場に寄る。

 

なぜか。

 

いろいろ考えてみたのだが、いちばん納得のいった結論がこれだ。

上でも申し上げた通り、女子トイレにはいつもたくさんの人が居合わせている。

すると自然にその視線を意識することになる。

その赤外線防犯システムよろしく張り巡らされた視線を、手洗い場をスルーしてかいくぐるなどということは、不可能なのだ。

手洗い場に寄らないことは、社会的にダメなのだ。

実際にキチンと洗えているかどうかは別として、手洗い場に寄り、水を出す。その事実が重要なのだ。

だから女子は、自分がハンカチを持っていないことをわかったうえで、手を拭く手段がないことを承知したうえで、手洗い場に寄るのだ。

 

「(あ、さっきの女の人、彼氏待たせてたんだ。手繋いでる。)」

 

 

 

キチンと手を洗い、ハンカチで手を拭くところまで見届けたうえでようやくゲートを通過できるよう、赤外線防犯システムの性能向上を願うばかりである。